高野 将人 魚Bar 一歩@恵比寿

―証券会社のアナリストから、飲食店開業という異業種への転身へのきっかけをまずお聞きしたいです。
自分の中で、30歳で貯蓄1千万、独立するというのは決めていました。独立ありきだったので、飲食での独立とは決めてはいませんでしたね、実は。アナリストだった頃、自分が担当していたセクターは、小売サービス業で、当時サザビーや良品計画といった新しいライフスタイルを提案していく企業として、世間の人気も高く、マーケットとして面白くて、よく勉強していましたね。雑貨、カフェ、セレクトショップなど、世の中の人を幸せにする新興企業は非常に魅力的でしたね。自分も独立するなら、幸せや豊かさを感じさせる業態だと思いましたので、その中から、飲食を選んだきっかけは、まず飲み食いが好きだったからですね(笑)
―好きって事は大事ですよね。 基本ですね、それは。
会社員だった頃、新人の時は、安いチェーンの居酒屋から始まり、財布に余裕が出てくると、いい店にも行けるようになって、いろんな飲食店に行きましたね。その経験の中で、たくさんの影響を受けてきて、飲み食いすることが好きな自分がいて、せっかくなら、上等な酒と旨い肴で、気の合う仲間と充実した会話の出来る空間と時間を提供出来る店を作りたいと思ったのが、今の店に繋がっていますよね。
―自分でこんな店があったらいいなと思って進めるのは、明確でいいですよね。
さて、飲食店をやろうと決めて、まず物件探しはどのようにされましたか?
恵比寿にはこだわっていなかったですね。条件は1千万円の無借金で借りられる物件でしたから、地域としては、北は王子、南は池上、東は浜松町、西は吉祥寺まで、物件の場所も、ターミナル駅周辺から住宅地迄、幅広く探しました。ある時、恵比寿の駅から5分、居抜き物件で、家賃も安め、という物件の情報が入りましたが、半年間空いているということで、確認すると造作譲渡の金額が高く、なるほどと思いました。それから少しして、譲渡額が、だいぶ下がったという情報を聞き、すぐ不動産屋に申込みをしたら、1番でしたね。それが今の店です。
―その頃既に、恵比寿は人気エリアですよね?とても運が強いですね(笑)
2004年秋にオープンし、約3年経ちますが、その頃の今のエリアの飲食店の数は、今の半分位でしたね。それが今では倍に増え、色々な飲食店が出来ました。僕としては、物件の条件がたまたま恵比寿だった。結果として、ラッキーでしたね(笑)

―開業準備にあたり、従業員はどのように考えていましたか?
最初は大学時代の同級生と2人でやろうと思っていました。店の内装工事などが始まり、進んでいく中で、相手が悩んでいるのがわかりました。家族から反対されていたようでしたね。確かに先がわからない飲食店の開業は、誰でも不安になりますよね。悩んでいる人に無理にとは言えませんでした。ただこの広さでやる以上、1人では無理なので、心当たりの2~3人に声をかけました。新しく従業員を雇って営業するつもりはなかったので。
結果、アメリカに居た弟が来てくれることになりました。弟にその話をしたのはオープンの1ヶ月前(笑)、でも来てくれましたね。
―現在もご一緒に営業されている弟さんの存在は大きいですね。
ところで、この場所でオープンするにあたり、オープン前の広告宣伝は何か準備されたのでしょうか?
広告は、インターネットでの飲食情報サイトに掲載する位でした。
業態的に、特に費用をかけて宣伝を行うことは考えていませんでしたね。口コミでお客さんがじわじわと来てくれる業態と予測していましたので・・・。お陰様で3年経ちましたが、前年比も毎年超えて、きれいに右肩上がりになっていますので、間違っていなかったと思いますよ。(笑)
―3年経って、恵比寿での飲食店営業の特徴もお判りかと思いますが、今後の目標や考えていることがあれば、教えて頂けますか?
今は、とにかくこの店を頑張ろうと思っています。そして、一緒にやってきた弟に、新しく1軒店を任せたいと考えています。2008年中には、実現出来るように、検討しているところです。2店舗目からキャッシュフローが変わってきますから、ゆくゆくはもっと大きい店舗もやってみたいと思っています。まずは飲食で足場をしっかり築いてから、経営としては、違うジャンルへの夢も持っていますよ。

―楽しみですね。高野さんは、飲食以外のジャンルも視野に入れていらっしゃるようですが、現在、飲食をやられていて「良かった」と思っていらっしゃいますか?
良かったですね。接客が好きですから、というか、人が好きですから。(笑)
楽しいですよ。
―高野さんが経験してきた中で、飲食店の開業、独立を考えている人へのアドバイスがあれば、ぜひお願い致します。
僕流のやり方ですけど、奇を衒ったことをやるよりも、地道にお客さんがついてくることをやること。それは何かいうと、「基本に忠実であること」だと思います。飲食の業界用語でQSCというのがありますが、クオリティ(Q)、サービス(S)、クリンリネス(C)は、お客さんをもてなすハード面も含め、飲食業を営業する上での最低条件ですが、これを基本として、徹底して絶対にやることです。知恵を絞って雑誌に載せてもらうことをあれこれ考え、集客、販促に頭を悩ませるより、目の前のやるべきことをきちんとやっていれば、それは店の表情に自然と表れます。それを徹底してやってきたことが今に繋がっていると自負しています。けして、これで充分とは思ってはいませんが、これが全ての基本となっていますね。
―ありがとうございます。ご自身で実行してきたことだからこそ、とてもリアルなお言葉です。最後に、高野さんが普段意識していること、例えば、座右の銘などがあれば、教えてもらいたいです。
僕が意識して、実行していることは、
「人に評価されるのを気にするよりも、自分で自分のことを評価するようになれ」ということです。他人を気にして、媚びたりするよりも、自分に胸を張って生きているのか、自分に恥ずかしくなく生きていれば、周りも評価してくれる、ということです。人として基本である挨拶、礼儀はもちろん、謝ることはきちんと謝る。自分に嘘をつかず、正々堂々と出来ることで、判断を迫られた時、ぶれないし、迷いませんから。
【高野店主のお店のこだわりのもの】

最初に店主にこだわりのものは何ですか?と聞いた時、高野店主は「ハートです」と答えられましたが、残念ながら、ハートは写真に撮ることが難しいです・・・(笑)
「それなら、一切妥協しない魚ですね。素材にはお金かけていますから。」
今日の築地からの仕入れで一番のおすすめは、鹿児島産の鯛です。この鯛は、やはり刺身で食べてもらうのが一番ですね!
【インタビューを終えて】
1つ1つはっきりとした落ち着いた口調で語られる高野店主は、まだ30代前半でありながら、言葉の端々に確かな自信と男気が感じられる、頼もしくクレーバーな店主という印象です。時折見せる、はにかんだ表情でおっしゃった「人が好きですから」という言葉に、高野さんの温かいお人柄を感じました。恵比寿にある旨い魚と上等な日本酒が味わえる大人が集う居酒屋の店主は、今後どんな新たな展望を企んでいるのか、非常に楽しみです。







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